『悠!』

教室に向かう途中の廊下で

後ろから誰かに呼び止められた

『ん?』

後ろを振り向くと未苟がいた

『昨日メール送らなかった』

顔に似合わないしかめっつらをして

怒っている

昨日の泣き顔は何処へやら

『特に送る理由も無かったし』

彼女の顔はどんどん曇っていく

『理由なんているの?』

俺は左手に付けた時計を確認して

『チャイムなるぞ』

怒る彼女を尻目に

教室に逃げ込んだ

前の自分ならこんな絡みも出来なかっただろう

まして女の子となんて

その日の未苟はずっと機嫌が悪く

チラチラ俺の方を見ては頬を膨らませていた

最後の授業が終わって

生徒が一斉に教室から出る

部活に行く人

家路を急ぐ人

俺はその波が一通り無くなった後

教室を出る事にした

隣の席の女の子は携帯を構っている

気にもしなかったが

携帯にぶら下がる物に釘付けになった