「こんにちは、牧瀬さん。今日は森崎いないの?」
私が睨み付けているっていうのに、芦野くんは依然として柔和な笑みを浮かべたままだった。
「今日は、葵はお休みなの。」
昨日はどうやら、馨さんの隙をついて出てきたらしく、
さすがに今日は見張られているらしい。
馨さんは今日は大学は休みだとかで、隙はないんだと思う。
「ふぅん。昨日から辛そうだったもんねー。大丈夫なの?」
「…っ!」
やり場のない怒りに、体が震えるのがわかった。
この人は、どうしてこう普通にしていられるの?
自分が優勝したいが為に、葵を裏切ったくせに。
「…ってよ。」
「え?何?」
「葵に謝ってよ!!」
ここがどこだったかということも忘れ、怒鳴った。
一瞬で教室内は、水を打ったようにシィンと静まり返り、全員の視線が私たちへと向けられていた。
だけど芦野くんは何事もなかったかのように、相変わらず穏やかな顔のままだ。
それが、余計に腹立たしい。

