葵はその後、迎えに来たお兄さんである馨さんの車で家へと帰った。
私に、芦野にはくれぐれも近寄るなと言い残して。
私もその日はもう、おとなしく家へ帰った。
そして次の日。
事件は起こったのである。
「牧瀬さーん。」
昼休み。
クラスの男子に呼ばれ、振り向く。
私を呼んだのは、入り口にいた話したこともない男子。
「何?」
「呼び出し。D組の芦野から。」
どくんっ
心臓が、鷲掴みされたかのような衝撃が走った。
「おーおー、モテモテだね」
何も知らない玲菜は、そんな風に冷やかしの言葉を吐く。
そんなんじゃないよと玲菜に微笑みかけ、私はぎゅっと拳を握り締めて入り口へ向かう。
そこにはいつもと変わらない、穏やかな微笑みを浮かべた芦野くんがいて。
昨日のことは、全部夢だったんじゃないかと錯覚しそうになる。
しかし、全て事実。
私は呼んでくれた男子にありがとうと礼を言い、きっと芦野くんを睨み付けた。

