「まぁ、ざっとこんな話だ。」
葵は、平然とそんな話をした。
まさか、そんな過去があったなんてちっとも知らなくて。
じゃあ、葵が変わってしまった元凶は芦野くんということになる。
信じていた芦野くんに裏切られ、葵はどれぼど悲しかったことだろう。
私には、想像も出来なかった。
「…ばーか。」
「なっ!」
突然葵がそんなことを言うから、顔をあげてキッと葵を睨み付けたその時。
ふわっと私の頬に添えられた優しい手。
あまりの突然さに驚いていると、葵は優しい目と声で静かに笑った。
「俺の為なんかで、お前が泣くことねーよ。」
え…っ。
そう言って、私の頬に添えた手の親指でぐいっと私の目元を拭う葵。
意味がわからなくて自分でも目に触れてみる。
指には、透明な雫が付いていた。
「あれ…、私、泣いてた…。」
「は?気付いてなかったのかよ」
「うん。」
「…ぷっ。」
それから葵は、吹っ切れたみたいに大笑いし始めた。

