「ぜってぇ今日は帰る。お前を一人で帰せるか」
「いいよ、葵忙しいでしょ?」
「あんなもん俺がいなくても南沢がやってくれる」
南沢(みなみざわ)くんとは、副会長さんのことだ。
同じ学年で、しっかり者らしい。
「だからって、南沢くんが可哀相だよ」
「南沢だけじゃなくても、英田(あいだ)や瑞代(みずしろ)もいる」
どんどん名前が出てくるけど、顔と名前と役職が一致しない。
「それに、もう仕事も片付き始めてる。そんなに人手は必要ねぇんだよ」
…一番必要な人手は葵だとおもう。
私は、思わずため息をつきそうになった。
そう。
葵はいつの間にか、すっかり甘々になってしまったのだ。
甘々…、でいいのかな?
うまく説明できないけど、それだけ変わったってこと。
正直、悪い気はしないけどね。
最初のムカつく最低男はどこへ行ったのやら。
今はすっかり影をひそめ、男女関係なく同級生や後輩からも信頼が厚い。
やっぱり葵は、何をしても様になるよね…。

