逃げなくては…!
頭ではそうわかっているのに、体が言うことを聞いてくれなかった。
「や…めろ、あし…!」
「…うるさいよ。」
がんっ!!
空手着を掴んでいた俺の手を振り払うように、強烈な芦野の蹴りが俺の体に直撃する。
「ぐ…ぅ!」
すっかり体に力の入らなくなった俺は、あっさり吹っ飛ばされ、壁に背中を強打した。
肺に溜まった空気が押したざれ、ごほごほと激しく咳き込む。
「手間かけさせるなよ。」
ぐいっと俺の襟を掴みあげ、芦野の細腕からは想像も出来ない程強い力で俺を引きずり、近くの部屋へと投げ入れる。
「試合が終わるまで、おとなしくしてろよ。」
そう言って、芦野は扉を締めようとする。
俺は残った意識で、精一杯声を張り上げた。
「芦野…!なんでこんな…ことっ。俺たち、友達じゃなかったのかよ…っ!」
「―――…始めから、邪魔だったんだよ。お前は。」
どくんっ!
胸に、鈍い痛みが走った。
今まで受けた暴行の痛みよりも、更に痛い痛み。
―――ずっと、友達だと信じていた。

