「なぁ、どこまで行くんだよ。もうすぐ試合が始まるぞ?」
「そのことなら君は心配しなくていいよ。」
「あ?なんでだよ。」
「さぁ、なんでだろうね。」
くすっ、と芦野は笑った。
まるでバカにされたみたいな感じがして、俺は思わず芦野に詰め寄った。
「なぁ、どういう意味だよ!」
「まぁ、こういうことだよ。」
ピタリ、と芦野の動きが止まった。
気が付けば、廊下の突き当たりまで来ていたようだ。
「ここかよ。それで、どういう話?」
「…そうだな。簡単なことだよ。」
「えっ…」
くるり、と踵を返した芦野の表情はまるで氷のように冷たくて、思わず悪寒が走った。
こいつのこんな顔は、一度だって見たことはなかった。
「森崎。お前には、“俺”の踏み台になってもらうよ」
“俺”…?
今こいつ、俺って言ったか?
しかも、口調だけじゃなく雰囲気も全然いつもと違う。
「あ、芦野…踏み台って…」
俺は混乱する頭で、ようやくそれだけを口に出来た。

