「言ったな。これでも、相当練習したんだぜ。」
「だろうね。」
芦野は、ふっと笑った。
その笑顔が、なんだかいつもと違うような気がしてならなかった。
「ねぇ森崎。ちょっと話があるんだけど。」
「え?何だよ。」
「いいから、着いて来て」
芦野にそう言われ、深く考えずに着いて行った。
しかし芦野は、体育館を出て、建物の玄関を通りすぎ、薄暗くて誰もいない外れの廊下を進んでいく。
とうとう不安になった俺は、若干焦った声音で芦野に尋ねた。
「おい、どこ行くんだよ。」
「来ればわかる。」
俺の前を静かに歩く芦野は、振り返ることなく淡々と歩みを進めている。
しかし、ここは明らかに立ち入り禁止区域だ。
灯りもついてない廊下の所々には重々しい鉄製のドアがあって、そのせいでこの空気の重さをより一層際立たせている。
見た感じ空き部屋であろうそこは、きっとスポーツをする際の道具などをしまうのに使われているのだろう。
それに、もうすぐ試合が始まる時間だ。
俺はもう一度芦野に声をかけた。

