試合は着々と進み、俺は気付けば決勝まで勝ち進んでいた。
トーナメント表を確認すれば、対戦相手はやはり芦野。
黒帯で胴着を纏うその姿は、普段のおおらかな雰囲気とは異なり、強く、凛として、そしてどこか冷たさを感じる。
決して負けないという強い意思の下、揺るがない自信と誇りに満ち溢れ、対峙した者を気迫だけで怖気づかせる容赦の無い視線。
だが、その視線は一度も俺に向けられたことはなかった。
だから、余計に楽しみだった。
芦野の本気は、試合でなければ見られないから。
―――ただいまから、決勝戦を行います。その前に、10分ほどの休憩を…
だだっ広い体育館に、場内アナウンスが流れた。
10分か。
さて、どう暇を潰そうか。
そう考えていた時だった。
「森崎ー。」
遠くで、俺を呼ぶ声がした。
その声を頼りに目を向ければ、芦野が笑顔を浮かべて手を振っている。
俺も手を振り返し、芦野のそばへ駆け寄った。
「よぉ。やっぱ決勝だな」
「うん。まさか本当に勝ち進んでくるなんて思わなかったよ」

