「葵、葵!」
「牧瀬?なにしてる?」
その時、誰かが少し離れたところに立っているのに気付いた。
私は、それが誰なのかすぐにわかった。
「奈波先生っ!」
私のクラスの担任である、奈波雪夜(ナナミ ユキヤ)先生だった。
若くてかっこよくておもしろくて、ってよく女の子たちが噂している先生である。
そんな奈波先生は、慌てた様子で私たちに駆け寄る。
「奈波先生!葵が…!」
「落ち着いて。何があった?」
「突然倒れて…っ、私、慌てて受けとめたんだけど、ぴくりとも動かなくって…っ」
「大丈夫だ、牧瀬。落ち着け」
奈波先生の力強い口調に私は、ようやく少しずつ落ち着き始めていた。
「…ぅ」
その時、かすかに葵は呻き声を洩らした。
「葵…!?」
「森崎、しっかりしろ!」
先生がそう声をかけると、葵はうっすらと目を開き、不快そうに顔を歪めて呟いた。
「―――最悪だ…。璃依が、奈波に見える…」
「…悪かったな、俺で。助けてやらねぇぞ、くそガキ」

