「――悪い、璃依。遅くなって」
耳元で葵が擦れた声で言った。
「べ、別に呼んでないし…。ってか、葵が来なくても私が…」
「…悪かった。」
「…っ!」
私の強がりを、葵はあっさり見破ってしまった。
「だから…、別に私は…っ」
「…もう、約束は破らねぇから。だから…もう、泣くな。」
「……葵のバカ!」
「…ああ。」
「バカ!バカバカバカ!!まぬけ!すっとこどっこい!トーヘンボク!まぬけ!のろま!アホ!」
「ああ。そうだな…。」
「葵なんか…っ、葵なんか、大嫌いなんだからぁっ!」
「ああ。」
葵は、そう怒鳴り散らす私を静かに、優しく受けとめてくれた。
葵は、悪くないのに。
ちゃんと、約束だって守っててくれて。
悪いのは、油断した私なのに。
それでも私を責めるわけでもないし、呆れたりしない。
ただただ、温かい手で包み込んでくれた。

