私は、芦野くんの様子を伺いながらそっと葵のそばへ駆け寄った。
だけど、そんなことはもうどうでもいいと言いたげに、肩を大げさにすくませて見せただけだった。
もう、自分の興味はお前ではなく森崎だと、目がそう言っていた。
「で、またやるのか?痛い目を見るだけだと思うけど」
「…ちっ!」
芦野くんのその言葉に、葵は忌々し気に舌打ちをした。
「なぁ、牧瀬?こいつは、周りの奴らに強いだとか最強だとか色々言われてるけど、実際は大したことないんだぜ?」
え…っ?
芦野くんのその言葉に、葵のぎりっという奥歯を噛み締める音が聞こえてきた。
「な、森崎。ついさっき、お前はこの俺にボコボコにされたよな?」
嘘…、そんな、まさか…。
嘘に決まってるだろ、バカ。
そんな言葉を期待して、葵の方へと目を向ける。
だけど、葵の姿を見たことによって、現実を突き付けられた。
葵の綺麗な顔には、いくつも傷があって。
唇の端には、血がにじんでいたのだ。

