「あんたもさぁ、俺のこと女みたいだと思ってた感じ?残念だね。見た目はこうでも、身体も力も中身も…男だから」
「…っ!」
そう言って、細くて長い指でくいっと再び持ち上げられたあご。
そのまま、芦野くんの顔がゆっくり近づいてきて…―――!?
私は、思わずぎゅっと目をつぶった。
葵、どこにいるの!?
やだ…葵、葵!!
「―――璃依!!」
「…っ!?」
ずっと求めていた人物の声が、私の耳へと届いた。
素早く反応し、そちらに目を向けると。
階段の下のところで、苦しそうに肩で息をした葵がそこにいた。
「あお…っ!」
「芦野!てめぇっ!!」
ドスの利いた、葵の低い怒鳴り声がそこをこだました。
葵の、怖いくらいの剣幕にさすがに芦野くんもわずかにたじろいだ。
だがそれも一瞬のこと。
すぐに、またあの何かを企むような、妖美な微笑みを口元に浮かべた。
「もう来たか、森崎。なかなか早かったなぁ?」

