「それで、話って?」
「あぁ、うん。大したことじゃないんだ」
そう言って、芦屋くんは気まずそうに目を伏せた。
一体どうしたというんだろう…。
芦屋くんに連れてこられた、人気のない屋上用の階段に私たちは腰掛けていた。
隙間から漏れる冷たい風が、私の頬をかすめていった。
「牧瀬さんが、あいつの彼女だってことはわかってる。」
慎重に紡ぎだされた言葉。
私は、何も言えずにその次の言葉を待った。
「だけど、僕は牧瀬さんが好きになってしまったんだ…。」
「…っ!?」
予想もしてなかった話に、私は大きく目を見開いた。
芦屋くんが、私を好き?
いやいや、ないでしょ。
何かの間違い?
そうに決まってるよ。
まさかこの人、私のでたらめな噂を知らない?
そう、でたらめってわけでもないけど…。
いや、でもまさか…。

