「葵…?」
「え?あ、何?」
「別にあの…、そういうんじゃないから」
「…わかってる。」
安心するはずのその言葉が、今はただ不安を煽る。
いつもと違う葵。
堂々としてて、自信に溢れてて、強くて。
そんな葵は、今ここにいない。
私は葵にかける言葉が見つからず、結局何も聞けなかった。
その日の昼休み。
葵はお昼を食べずに、私が声をかける間もなくどこかへ消えた。
一言も残さず、募った不安だけを置いて。
「森崎くん、どこ行ったのかね?」
「わかんない…」
「ほら、不安そうな顔してないでお弁当食べちゃいなよ。」
「うん…。」
玲菜に勧められ、しぶしぶ箸を取る。
今日は唐揚げなのに、食欲がない。
二個も入れてきたのに…。
「そんな心配しなくても、森崎くんなら平気でしょ」
「え?」
「あの森崎くんが誰かにボコボコにされるなんて、まず考えらんないし」

