昨日偶然にも校門の所で会い、自然な流れで一緒に帰ったこと。
そこで、芦屋くんが葵の幼なじみだということ。
そして、芦屋くんのことを葵は忘れてしまっていたということを聞いたこと。
そんなことを簡単に話した。
一通り聞き終え、玲菜は予想外だったのか大きく目を見開いた。
「なんだ、そういうことだったの」
ちょっとがっかりした、と言わんばっかりに不満そうに口を開く。
「でも、興味があったのは璃依にじゃなくって森崎くんにだったかぁ」
と玲菜は、あーあ…、なんてわざとらしくこぼす。
その瞬間、葵の片眉がぴくりと上がり、すっと目が細められた。
マスクのせいで顔半分しか表情がわからないのだが、それでも十二分に怒っているのがわかる。
しまった、やられた。
そう思ったときには既に遅く。
葵に見えないよう、私にペロリと舌を出す玲菜の姿がそこにあった。
玲菜ぁ〜っ!!
私が怒りを込めて軽く睨むと、いたずらっぽい笑みを浮かべて巻き込まれまいとさっさと他の人の輪へと消えていった。

