階段を登って教室のある階まで行く。
みんな、友達や彼氏と楽しそうに談笑しながら廊下を行き交っていた。
「あ!璃依!!おはよう!」
そんな中、大好きな玲菜の声が雑音を突き破って私の耳へと届く。
「あ、おはよう!!」
ニコッと緩む口元を慌てて押さえながら言うと、玲菜の目が意味ありげに輝く。
「あ、森崎くんが一緒だからってにやけてる。」
「べっ別ににやけてなんかっ」
「あるある。おはよう、森崎くん。風邪はもうだいぶいいの?」
「ああ。それに、こいつが心配で寝てらんねーから出てきた。」
なんて、全然大丈夫じゃない声で言う葵。
玲菜もそのことには気付いたらしく、苦笑いを浮かべている。
その時ふと、忘れていたことを急に思い出した。
「そうだ。すっかり忘れてたけど、芦屋くんに謝った方がいいよ?思い出したんでしょ?」
「…ああ。あとで謝っておくよ」
少し葵の返事が遅かったことが気になったんだけど、それでも謝ると言ってくれた葵にほっとしていた。

