握られた葵の手は、すごく熱くて。
どれだけ熱があるのか、わかってしまった。
「葵。ちょっと手離して」
「ん、どうした?」
考えこんでいた葵は、ふっと顔をあげて手を離してくれた。
私は自分がしていたマフラーを解くと、ふわりと葵の首に巻いてやる。
「え…っ」
「風邪っぴきが、薄着しない。熱あがるでしょ」
「…ふっ。お前、可愛すぎ」
「えっ?」
「なんでもねぇよ。ほら、ちんたらしてっと遅刻すんぞ」
「うん…?」
葵がモコモコの白いマフラーを巻いているところは何だか新鮮で。
しかも、女の子ものなのに意外と似合っているという。
なんだか可笑しくなって吹き出してしまった。
「何笑ってんだよ」
「別にー??」
葵がほんの少し、すねたような顔をしたのを私はしっかり見てしまった。
なんだか今日の葵は可愛いなって思ってるうちに、いつの間にか学校に着いていた。

