「特に、言われてないと思うけど…。」
「…そうか。」
それっきり、葵は黙り込んでしまった。
どうしたんだろう…。
やっぱり、芦屋くんのこと思い出したのかな。
でも葵の顔は、過去の友達に懐かしんでいるようなものではなく、深く怒っているかのようだった。
「…っ、ごほっ、ごほごほ…」
「えっ、大丈夫!?」
突然葵が苦しそうに咳き込むものだから、驚いて近づこうとするのを葵に手で制された。
「大丈夫…だから。気にすんな」
荒い息の中優しい声音で言われ、出しかけた手をそっとひく。
それを見て、葵はマスク越しににこりと笑った。
「なぁ、璃依。あんまり芦野に近づかないでくれ。」
「え…。」
「頼む。」
葵は、握っていた手をさらに強く握り締めた。
そのとき、ふと気付く。

