俺様彼氏と空手彼女2






「ほら、行くぞ」




いつもはここで、すっと左手を差し出してくれる。




けど今日は。





その手はポケットの中のままだった。






風邪をうつすまいとしてくれている気遣いが、嬉しいような哀しいような。





「…葵。」




「ん…?」




「手。」





「…は?」





「だから、手!」




ぷいっと目を反らして、右手を差し出すと葵は一瞬きょとんとした。




だけどすぐに。





「ばーか」




可笑しそうに笑いながら、私の右手を左手でぎゅっと握ってくれた。




「学校着いたら、すぐ手ぇ洗えよ?」





「…洗わないよ」





「お…、珍しく素直で。」



「めっ、珍しくは余計!」



前言撤回!


すぐ洗ってやるから!






「俺がいなくて寂しかった?」




「…別に、玲菜いたし。」



「ははっ…、元に戻っちまった」




「こっちこそ、心配して損した。元気じゃん」




「心配してくれたんだ」



「しっ、してない!帰れバカ葵!」




「はいはい」