「本当?ありがとう。牧瀬さんは優しいね」
「えっ!?全然だよ!」
否定の意味を込め、顔の前で両手をブンブン振る。
「でも、もっと早く葵に話かければ良かったのに…。」
「お前誰って言われるの嫌だったし、雰囲気が変わってたから何だか話かけにくくて。」
そう言って、芦野くんはその整った顔に苦笑いを浮かべた。
その姿が、ますます可哀想に見えて。
私は芦野くんに同情しきっていた。
「ねぇ芦野くん。昔の葵ってどんなだった?」
「ぼくが知ってるのは、10歳までの森崎だよ」
「10歳…。」
私は何となく、うんと小さい葵を想像してみる。
きっと、今と違って子供らしくて可愛いんだろうなぁ…、なんて。
そう言えば、葵の小さい頃の写真とかって見たことないかも。
今度、見せてもらおうかな。
…見せてくれるといいけど。
まぁ、たぶん見せてはくれないな。
馨さんに頼んでみようかな。
なんて考えていたうち、いつの間にか私の家の前にさしかかっていた。

