「何かな。何か、ぼくに聞きたいことでもあるの?」
「えっ」
そうしようかと思っていたところにそう聞かれ、思わずギクリとする。
って、そんなにびくつくこともないよね…。
どうせだし、聞いてみるか。
「あの、葵のこと前から知ってたの?」
「ああ、うん。知ってるよ。森崎は忘れてるみたいだけどね」
やっぱり…。
「どこで会ったの?」
「昔、家が隣だったんだ。」
「えっ、そうなの!?」
「そう。森崎が引っ越す前まではね。」
そう言って、ほんの少し目を伏せてしゅんっとうなだれる芦野くん。
「そうだったんだ…。」
じゃあ葵は、幼なじみのことを忘れちゃってるわけか…。
そりゃあ、怒りたくなるよね。
この人の態度とか雰囲気が変わった理由がわかった気がする。
そうしたら、なんだかこの人が急に可哀想になった。
「大丈夫!私が葵に言っとくから!きっと思い出すと思うよ」
私はなんの迷いもなく言った。

