気のせい、なのかな…。
「でも、本当に牧瀬さんはすごいと思うよ」
「え、なんで?」
突然言われて、思わずきょとんとする私。
「だって、君のおかげなんでしょ。森崎があんなに変わったのは。」
「え…っ」
芦野くんはごく自然に言ったけど、なんだかその言葉にひっかかった。
まるで、昔の葵を知っているみたい。
確かに、昔の葵は今では想像も出来ないほどクールだった。
いつもむすっとしてて機嫌悪そうで。
最初の印象だって、最悪だった。
葵なんか、本当に大嫌いだった。
けど、実は葵には結構助けられていることに気付き、今では最初の印象なんて払拭されてる。
でも、葵がそんなだったのは一年の頃までの話。
ってことは、芦野くんはそれ以前の葵を知ってる…?
この人、謎が多すぎ。
あんまり自分のことは話さないし。
ってか私が聞かないだけなんだけど…。
思い切って聞いてみようか。
いつの間にやら警戒心はすっかり薄れ、わずかに彼に興味を抱き始めていた。

