「芦屋じゃなくて芦野だよ。覚えにくいなら、悠って呼んでくれてもかまわないけど」
「あ、ごめんね芦野くん。」
悠なんて呼んだら、葵が何をするかわかったもんじゃない。
「牧瀬さんってこっちなの?」
「そうだけど」
「へぇ、偶然。僕もこっち」
「そ、そうなんだー」
芦野くんは私のペースに合わせて一緒に歩きだす。
あぁ…。ホントにこの人なんなの?
思わずため息をつきたくなった。
…そうだ。
途中で道を変えればいいんだ。
こっちだから、とでも言って。
「あ、あの芦屋くん。私、こっちだから。」
「そうなの?偶然。僕もなんだ」
まさかの逆効果ーーーーっ!!
「それと牧瀬さん。僕は芦屋じゃなくて芦野ね。」
何度も間違えているって言うのに、相変わらず芦屋くんはニコニコしている。
やっぱなんか、嘘っぽい…。
「ねぇ牧瀬さん。森崎葵って、どんなやつなの?」
突然聞かれ、私は一瞬固まった。
なんでそんなに葵が…?

