「どこが!」
「別に、色々」
再び立ち上がる私を気にした風でもなく、玲菜は卵焼きを口へ運び、咀嚼(そしゃく)する。
「わ、私なんてっ…」
「あのね、言わしてもらうけど、あの森崎葵が選んだ女の子だよ?女なんか、何もしなくても死ぬほど寄って来るような男だよ?」
死ぬほどって…。
でも、否定出来ないのが悔しいかも…。
確かに、葵はかなりもてる。
街を歩けば、必ずスカウトの声がかかるし、逆ナンされているのを見たこともある。
私だって、二年近く一緒にいるけど、未だにドキドキする。
男の人なのに、全く痛んでない黒髪とか。
高い鼻、綺麗な目、長い手足。
どれを取っても完璧なあいつが、私の彼氏だなんて。
「…璃依、またネガティブ思考に走ってる?」
「う、走ってない」
「まったく。気の強い空手少女の璃依にここまで心配させるなんて」
やれやれ、と言わんばかりに苦笑する玲菜。
なんか、玲菜と話してホッとした。
さっきまでの、モヤモヤがどこかへ飛んでったみたい。
ありがとう、玲菜。

