「かなりスピード出してきましたね。危ないですよ。」
リサが運転席に向かっていった。
「しかし、あなた方が極寒の中で待っておられるというので・・・。」
運転席から回答が来た。ただ、それはいいわけじみておらず、思いやりに満ちていたよう泣きがした。温かい車に乗ってユミとリサの顔には安心の笑顔が浮かんでいた。ただ、ヒカルを除いて・・・。
「しかし、電話をいただいてホントに良かったです。ここらのバスは先日倒産しまして、いくら待ってもらってもバスはきませんから・・・。」
運転席から声がした。
「そうなんです。でも、あなたのところの電話番号がわからなくて・・・。それで電話番号案内で・・・。」
ユミはこれまでの経緯をかいつまんで語った。
「ほー。電話番号案内とは・・・。NICEなアイディアですな。」
運転席からは『うんうん』うなずく声がした。
「ホントに。私全然気がつかなくて・・・。みんなに寒い思いさせちゃって・・・。」
ユミの声のトーンが下がった。それに感づいたリサがあわててフォローを入れた。
「ぜんぜん。私だって気がつかなかった。同じだよ。」
「お客さん。とっても仲がいいんですね。お嬢さん。そう失敗を深く悩んではいけませんぞ。私もこうやって来ましたし・・・。それに、人間という生き物は普段自分の置かれていない状況におかれると混乱して、普段当たり前に気がつくことを見落としてしまうものナンです。でも、それは普通のことなんですよ。大事なのは、ソレをどこまで克服できるか。そのために我々は練習したり、学習したりするんです。」
どこかで聞いた事のある慰めの文句だったので二人はびっくりした。しかし、それ以上に肩をワナワナ震わせている少女がいた。
「キサマ・・・。」
「いつだ。いつ帰ってきた・・・。」
ヒカルが急に怒鳴った。車の中にながれていた暖かい空気が一瞬にして凍りついた。
運転手はヒカルの質問に答えなかった。
「答えろ。タケシタ・・・。」
ヒカルが再び怒鳴った。
「怒鳴るな。うるさい。」