「激寒･･･。」
「雪がやみませんね。」
「これは。歩いての下山は無理だわ」
「みなさん。すこし黙ってください。とりあえず、観測所まで行きましょう。」
タケシタは三人の肩をぱんぱんとたたくと前に進むように促した。
雪は強く観測所に灯る明かりがぼやけて見えた。
「タケシタ。これでは足跡が雪で消えちゃったかも･･･。」
「かもしれません。それに、皆さんが歩きまわったせいで、足跡がどれかもわかりません。」
タケシタが丁寧な口調で返した。
「それにしても、タケシタさん。」
前を歩いていたリサが急に後ろを振り向いたのでタケシタとヒカルはビクッとし、足をとられて滑りそうになった。
「なによ。リサ。急にびっくりするわ。」
ヒカルが声を上げた。
「どうしましたか？リサさん。」
ヒカルが落ち着いた声で言った。
「なだれというのはよくあるのですか？」
リサが心配そうな顔をしている。
「私がここにお世話になり始めたのがここ最近ですので･･･。ですが、オーナーからもそのようなことが良くあるという話は受けていませんね。」
「じゃあ。もしかして、これは犯人が私たちをかく乱するために爆弾を使って。」
先頭を歩いていたユミがこっちを急に振り返った。だが、その言葉にヒカルは首をかしげた。
「うーん。でも、雪崩なんか起こしたらよけい警察とかが救出に来る可能性が高まっちゃうよ。どうかなぁ。タケシタ？」
「うん。良い意見だね。」
ヒカルの意見を聞き終えるとタケシタがうなずいた。
「僕としてはこのなだれは自然現象だと思っているよ。」
タケシタは立ち止まったユミを突付いて促す。
「だからこそ。犯人は次の犯行を急ぐと思う。だからこそ、こちらが早めに手を打たないと取り返しのつかないことになるよ。」
タケシタはそういうと先頭を歩いていたユミに
「急ごう」
とささやいた。