「タケシタさん。ヒカル…。」
リビングに戻ってきた二人にユミとリサが近寄ってきた。
「二人とも。こんな事件が起こったというのにふざけないで。」
リサがいつになく厳しい目つきで二人を見た。
「これから、事件の現場を見てきたいと思います。」
タケシタが小声で二人に言った。
「それなら、今。オーナーと立嶋さんが見に行っています。」
「それに、殺人犯がうろついているかもしれないというのに…。危険です。警察が到着するまでじっとしていた方が…。」
ユミとリサが声をそろえた。
「でもね。雪がまだやみません。ぐずぐずしていると大事な証拠である足跡が消えてしまうかもしれないのですよ。」
タケシタがなだめるようにいった。
「…。」
「では、こうしましょう。お二人とも私たちと一緒に行きましょう。」
タケシタが気ついたようにいった。
「タケシタ。そんな危険なこと…。」
ヒカルがいうのをタケシタは肘で小突いた。
『ヒカル。いいですか?私たちがここからいなくなれば彼女たちは殺人犯とともに、この中におかれるかもしれないということですよ』
タケシタがヒカルだけに聞こえるようにいつにない小声で言った。
ヒカルは少し驚いた表情を見せたが、すぐに小さくうなずいた。
「うん。それでね。危ないからユミもリサも一緒に来てほしいんだ。」
ヒカルが明るい表情で言った。
「え。じゃぁ、みんな。ここでまっていようよ。」
「だいじょうぶ。ユミさえいればお化け以外に怖いものなしだから」
ヒカルはリサの言葉をさえぎると二人の手を握って玄関へと引っ張った。