女子高生名探偵の事件簿

「見てください。」
吉川オーナーが観測棟へ続くドアを開けた。雪の中に一本の足跡がある。
「部長。確かに津村君の靴だけがありませんでした。」
「わかった。とにかく三田。行くぞ。荷物をもってこい。」
三田は走って荷物をとりに行った。
「オーナー。ちょっと良いですか?」
きょとんとしていたヒカルたちの後ろからタケシタが現れた。
「どうしたんだね?」
「実は・・・。」
タケシタがヒカルたちを気にしながらオーナーに耳打ちをした
「なにぃ。」
オーナーの眉間に強いしわが生まれた。
オーナーとタケシタは小さく耳打ちをするとどこかへ走っていってしまった。

「みんな。とりあえず靴を持ってきた。」
古川が6人分の靴を抱えて走ってきた。
それと同時に三田も大きなかばんを二つもってかけてきた。
「オーナーは?」
古川がたずねた。
「あのー。タケシタさんがきて、二人で走っていかれましたよ。」
リサが小さく答えた。
「なに・・・。」
古川の顔にしわが浮かんだ。
「しかたありませんよ。部長・・・。それより行きましょう」
「ああ。そうだ。」
「しまった。村上さんに知らせていない。」
三田が顔を上げた。
「仕方ない。三田。後から来い。」
そういうと古川はさっさと荷物を背負ってドアを開けた。
太陽は照っていたが、雪はやんでいなかった。夜の間に積もった雪が地面に白いじゅうたんを引いていた。ロープで縁取られた観測室への道には津村の足跡しかない。
「行こう。」
古川がいった。