「ん。ん~。」
ヒカルは目を覚ました。時計は一時を指していた。
「はぁ~。」
ヒカルは大きくため息をついた。もう、タケシタには合えないと覚悟していた。なのにあいつは現れた。アイツの作ったご飯も食べたし、ハーブティーも飲んだ。しばらく離れていたせいか、すべてに溶け込んだ竹下のにおいがきつかった。
ヒカルは部屋を出てリビングに下りた。暖炉の前に誰かが座っている。
「だれ。」
階段の上からヒカルが声を出した。暖炉の前の人間はビクッと身を振るわせた。
「ヒカルか。」
暖炉の前の人間はタケシタだった。
「タケシタ・・・。」
ヒカルがタケシタの隣に座った。
「君とココで会えるとは予想もしていなかったね。」
「わたしも」
「高校は楽しいか?」
「お父さんみたいなこと言うね・・・。」
「連絡しなかったのは悪かったと思っている。」
タケシタが俯いた。
「充実してたんなら良いんじゃない?」
「あ。やさしいな。」
「いつもだよ。」
いつもと違う、ヒカルの落ち着いた笑顔がパッと花咲いた。
「あの二人。君をしっかり支えてくれているみたいだね。」
タケシタがにっこり笑った。
「そう。ユミもリサも、すっごくいい人。二人とも才能あふれる人なのに私にかまってくれる。私を守ってくれるよ」
ヒカルもにっこり笑った。
「そうか・・・。」
タケシタはヒカルの背中をポンポンとたたいた。
「眠ろう。」
タケシタが立ち上がった。