【短】『鏡』

「・・・分かった。任せたよ」

「・・・はい・・・」

翼が背中を向けたとき、僕はようやく、重大なミスに気づいた。

「待て、翼! 行っちゃだめだ!」

翼も当然、僕のミスに気づいていた。

なのに、自分が行くと言った。

立ち止まって振り向いた翼は、やはり無表情のまま、僕を見た。

そして、何かを言って、走っていった。

「翼!」

追いかけようとした僕を、アスカが止めた。

「アスカ!」

振り払おうとして、アスカの画面に目を留めた。



     ワタシノブンモ イキテ



それは、翼の言葉だった。

「・・・アスカ・・・僕は、翼に何をした?」

翼は僕たちのために、こんなにしてくれたのに・・・。