【短】『鏡』


右手にはまだ、翼の首を掴んだ感触が残っていた。

翼を壁に叩きつけたときの衝撃も、はっきりと・・・。


自分でも、もう自分が解らない。

僕は、どうしてしまったんだ?


   キィッ

   パタン

「カズヤ様」

入ってきたのは、アスカだけだった。

「アスカ・・・おいで」

   カタカタカタカタ

僕はアスカを抱き締めて、必死で涙をこらえた。

「翼を傷つけた」

そんなはずはない。

翼には・・・『アンドロイド』には、感情なんてないのだから。


・・・解っているのに・・・苦しい。


「アスカ・・・」

   カタタタタッ

旧型のハウスキーパーの情報処理の音。

しばらく聞いていなかった気がして、懐かしくなった。

父さんと母さんを思い出す。

「父さん、母さん・・・僕はどうして・・・」