【短】『鏡』


「世界初の『アンドロイド』の完成は、世界に衝撃を与えました。十七歳にして数多くの賞を受賞したカズヤ・タチバナ博士は・・・」

学会での発表に成功し、それから多くの賞を受けた。

そして、いつの間にか『世界一の金持ち』になっていた。

『アンドロイド』の第一号の完成から、一年。

『アンドロイド』は既に、翼の代から何十代も進化している。

世間ではそのことを騒ぎ立て、時々、テレビなんかで特集まで組まれたりする。

今は、忙しすぎて目の回る毎日から逃れ、街から離れたこの屋敷で、アスカと一緒に暮らしている。

「博士、紅茶を」

翼が紅茶を持って部屋に入ってきた。

「あぁ、ありがとう」

翼は、心配そうに僕を見ていた。

「どうした?」

翼は言いにくそうに、でも、僕を見据えて口を開いた。

「・・・博士、なぜ・・・」

「え?」

突然のその言葉は、意外なものだった。

「なぜ・・・『アンドロイド』を創ったのですか?」