周りからのどんな声も全て耳に届かなかった。


ただ、りぃ君の体温と鼓動の音だけを感じて、身動きをせずにジッとしていた。



途中で何でか触られたけど、泣き腫らした不細工な顔を上げて、人に見られるなんて出来なくてそのままにしていたら、いつの間にかこの場所にいた。


二度と訪れる事のないと思っていた場所。



ガチャンと鉄が動く音がして、そっと顔を上げるとりぃ君がマンションの部屋のドアを開けたところだった。

「歌、靴脱げ」


未だに抱えられている私は、りぃ君の首に回した腕をそのままに、斜め上にある顔を見上げる。


戸惑いが表情に出てたのか、それを見たりぃ君がフッと笑って空いている手で私の靴に手を掛けた。


外靴に履き変えぬまま学校を出た私の上履きをりぃ君がスルリと脱がし、

ポトン…と音を立てて下に落とされた。