その瞳に一瞬怯んだけど、構わずに自分の気持ちを口に出す。


「歌なら俺が送るから……」

そこまで言って声を詰まらせた。
続きをサエちゃんの不敵な笑みに掻き消されたから。


「ムリ。今のこいつは俺にしがみ付いて離れねぇの」


そしてさらに続けられた言葉に息を呑む。



「仮に離れたとしても、他のやつに任せるわけねぇだろ」



地を這うように低く艶のある声で凄まれて、全身に鳥肌が立つ。


……先生、そんなの反則でしょ。

そんな『男』を全身から滲ませて、ただの高校生男子に威嚇なんかされちゃ、声も出せずに固まるしかない。


サエちゃんはそんな俺に軽く微笑んでから、「連絡頼むな」としっかり釘をさしてから、歌を抱えて歩いて行った。