そんな歌を遠目で見た事はあっても、噂でしか知らなかった俺は、噂だけで彼女の事があまり好きではなかった。


変なヤツ。絡みづらそう。

俺もみんなと同じ。勝手な偏見で歌を見ていた。



いつもの俺の隠れ家である屋上で歌を見た時、げっ!なんでここにいるんだよ、と鬱陶しく思ったのは一瞬だけだった。


フェンスの傍で上を向いて、その大きな瞳を瞼で閉ざしている姿は、胸が締め付けられて痛いくらいに切なかった。


近づいたのも、声をかけたのも無意識。

本能に従った行動だった。



彼女との関わってみたいと思った。

彼女の事が知りたいと。


歌と話すにつれ、一緒にいる時間が増えるにつれて、自分の中で歌の存在が大きくなっていくのを、もう無視できなくなっていた。