屋上にある貯水槽の横に立つ雅先輩がこっちに向かって歩きながら再び口を開く。


「言っとくけど私のほうが先にいたんだからね。盗み聞きじゃないんだから」


あ、そう言えばカギ開いてたもんね。
颯がいないのになんでかと思ったら、雅先輩が先客だったんだ。


雅先輩の少しばつの悪そうなその顔は、

今から私の話す内容を不用意に聞かないようにと気を使ってくれたんだとよくわかる。



出口のドアへと進む雅先輩の背中を見ていたら、

つい、

声をかけていた。




「あの、先輩も一緒に聞いてもらえないですか?」



私の話を。

私とりぃ君の関係をこの学校で唯一知る先輩に、応援するとまで言ってくれた先輩だから、

聞いてほしいと思った。