突然話しだした私に驚いたのか、りぃ君が間の抜けた声を出す。


伝わらなかったかな?

そう思い、もう一度口を開く。



「昔の事は誰にも言わない」

「おい、……歌?」


久しぶりに呼んでもらった名前に懐かしさで胸が熱くなる。
さっきは呼んでもらえなかった私の名前。


「私たちはなんの関係もない。今日初めて会った教師と生徒」


予想外のことに戸惑ったけど、大丈夫。


私は過去から逃げてきたんだ。

苦しくて辛くて。
全てを捨てて逃げ出した。


目の前にいる大切なあなたとだって、他人になれるよ。


あなたといると思い出してしまうから。
辛くて辛くて、息をするのも苦しかったあの時を思い出すくらいなら。


「……もう、りぃ君なんて呼ばないようにする」



知らないふりだってする。