狼彼女のお気に入り




「翔君にも出て欲しいんだけど…ダメ、かな?」


「別にかまわないが…手加減はしないぞ?」


「うん♪……憐ちゃんのためにも頑張ってね?」


「っ…?!」



な、なんでそれを…?!



耳元で小言で呟いた優太がウインクをする。



焦った俺の手から、飲もうと思って取り出したペットボトルが地面に落ちた。



「翔君かわい〜♪」


「か、からかうな…!!」



俺はペットボトルを拾って、速くなった鼓動を誤魔化す。



「…篠田は関係ない。」


「え〜?あんなに見てるのに?」


「は?見て、る…?」


「うん!憐ちゃん、ずーっと翔君のこと見てるよ。」



篠田が…?



“今日は会長だけを見に来たんだから。”



さっきの言葉が頭の中を巡る。



あれは……冗談じゃなかったのか?



あの時、本当はあまり信じていなかった。



でも…



本当にそうだとしたら…、正直、嬉しい。





チラッと屋上に目を移す。



そこには笑みを浮かべながら、悪戯っぽく舌を出している篠田がいた。



「…ふっ」



もう一度屋上を見て、俺は拳に力を入れた。



負けるわけにいかない。



というか、俺の意地として負けられない。



(絶対馬鹿にしてるだろ、あれ。)



俺は篠田に叫ぶ。



「ちゃんと応援しとけ!」



篠田にその言葉が届いたのかは分からないが、一瞬驚いてから嬉しそうに笑って大きく頷いた。