季節が巡った。


 雨は雪へと姿を変え、町が冬眠がごとく雪にすっぽり覆われると、
 いよいよ受験シーズンに突入した。

 勉強に集中するようになってからはあまり彼のことを考えずに済むようになっていた。

 しかし、すべてを忘れることが出来ないのもまた事実だった。

 引き出しを開ければシワのついた封筒が顔を出す。

 彼からもらったラブレターもとってある。

 捨てられなかった。

 ――否、捨てたくなかった。

 どちらか一方でも、手紙を捨てることは、彼との思い出をも捨て去ることだと思った。

 もちろん、ちゃんと話したことも、手を繋いだことも、デートに行ったことも、これという楽しい思い出は何一つとしてないけれど、

 あの日あのとき、照れながらもきっと決死の思いで手紙をくれただろう彼の心に触れた瞬間、

 そして、

 手紙を受け取ることでつながれたほんの一瞬が、わたしにとってはかけがえのない思い出だった。