「君の名前は？」

「あっ・・・・佐藤　美咲です」

「いい名前じゃん。」

「流行の名前なんですよ・・・私の生まれた年　人気ＮＯ１・・・」

「ふ～ん。俺も似たようなもんだ。　笑えるぜ　母親がさ　『愛と誠』っていう
　かな～～り　古典的なマンガを　俺が　腹にいる時読んで　その誠ってキャラに
　惚れこんじゃってつけたんだってさ。」

「あ・・・あの・・・私　これで・・・」

初対面の相手に　これ以上自分の事を話したくなかった。

「あ・・ああ　ごめん　缶コーヒー　ごちそうさま」

ベンチを立った美咲を引き止めるわけでもなく　彼が軽く缶をふった。


彼が直してくれた自転車を　押しながら　美咲は自宅に戻った。

教育熱心な　母親の　慶子が美咲を呼び止めた。

【なんだよ・・・今度は　何の話？】

うざいと思いながらも　慶子の前に座る。

「美咲　本当なの？」

【えっ？　なんだよ・・・・まさか　担任の奴　もう　あのことをちくった?】

「なんのこと。」

とぼけてみる。

「藤木先生から　電話をもらって驚いたわ。」

【やっぱりだよ・・・・】

「全日制で、しかも　あなたもう３年なのよ。来年の３月には卒業できるのに
いきなり　定時制に編入したい・・・・って　何考えてるよ。定時制から　
全日制に編入したという話は聴いたことあるけどって、困惑してらしたわよ。」

「中退するよりいいじゃん。」

「何が気に入らないの。　せっかく入った　有名高校なのに、入るなり
　自宅に引きこもって　登校拒否・・・それでも　３年までなんとか
　留年もしないで来たんじゃない。ここまで　来るのにも　お父さんも
　お母さんもどのくらい苦労したか・・・・」

「そうね。学校へどのくらい　袖の下渡していたのよ。」

「美咲！！」