「そうなんですか?」

幸子に 尋ね返した美咲に 幸子が言った。

「そうよ。 子供の事は かわいいし、大切だもん うざくもなるわよ。
 うざさは 愛情のバロメーターよ。」

「かわいくて 大事な子供と カップ麺取り合っていて、よく言うよ!!」


「おお。それ言われると 痛いネェ~!!でも、痛いところつけるようになって
誠君!!君がそう成長できてるのは 紛れもなく 母である私のお陰でしょ!!
お湯沸かして!!お湯!!親孝行しなくちゃねぇ~~~~」

「俺って 世界一 不幸な息子だろう?」そう言いながらも 誠の目は笑っている。

隣の芝生は良く見えるものだと 子供の頃から言われてきた。

これがそうなのだろうか・・・・・

本質をつきながらも、明るく笑いながらも 親子でこんな風に会話が弾む家庭。

こんな お母さんなら子供だって 悩みや 苦しみを気軽に相談できるだろうに。

家はそうじゃない・・・・

親の価値観を子供に押し付けるのが正しい教育だと思っている。

学校だってそう・・・・

それが わかるから 伝わってくるから・・・・悩みなんて相談できない。

苦しみだって・・・子供の苦しみなんて 取るに足りないと両親も学校も

そんな対応しかしてくれない・・・・

私は どんな些細な事でも聞いて欲しいのに・・・・

頭ごなしにそれは 変だろうと決め付けて欲しくないのに・・・・


暗い顔をして黙り込んだ美咲を見て 誠が声をかけた。

「できるまで 俺の部屋、来る?」

「えっ?」

「アダルト雑誌でも見せるつもり?」と幸子。

「それもいいんじゃない?」

「襲うんじゃないわよ。」

「あのね。お袋。」

「冗談よ。冗談。」

「来いよ。」

言われるがままに 美咲は誠の後について行った。