一之瀬ルキ32歳。営業サラリーマンである。
毎日同じ仕事をし、毎月同じ給料を貰い、毎年歳をとっていく。
そして、そんな日々を過ごす奥さんがいる。
言わば普通の人間だ。
彼になにも不自由はなかった。
あの日までは…


毎朝一之瀬の始まりは奥さんのユウと挨拶する事から始まる。
『ユウおはよう。』
『おはよう。今日何時頃帰る?』
『そうだなぁ…7時くらいかな。何で?』
『話があるの。』
いつになく真剣である姿に一之瀬もためらう。
『なっ…に?』
『帰ったら話すから、なるべく早く帰ってきてね。』
『分かった…』
それしか言えなかった。
一之瀬の頭を色んな言葉がよぎった。
離婚、不倫、別居…
一之瀬は考えながら家を出た。