アイツは死ぬべき人間じゃなかったのにな。


そう言って、道明さんは感慨深げに煙草の煙を吐き出した。


世の中には死んだ方がマシだと思うようなヤツだってたくさんいるのにね。


オーディオから未だ流れる悲しげな女性の歌声が、この沈黙に静かに溶けていく。


あたしが死にたいと望むのは、罪なことなのだろうか。



「俺はな、タカとリサちゃんには、後悔しないで生きてほしいと思ってるから。」


タカを殺すかもしれない道明さんなのに。


そう思うとまた悲しくなるけれど、でも生きろという彼の言葉は重い。



「生きるとか、愛するとか、あたしには難しいことだよ。」


「臆病になるような何かでもあった?」


「さぁね、忘れちゃった。」


肩をすくめて見せたあたしに、道明さんは何も言わない。


いつの間に、こんなにも自分は、誤魔化すことに長けてしまったのだろうか。



「タカとあたしって、何なんだろうね。」


呟きが物悲しくも消える。


肩に圧し掛かるタカの重みだけが、ただあたたかい。


それから、高速を降りて、車が地元の見慣れた景色に溶け込む頃には、すっかり世界は夜色に染まっていた。


生と死、人の営みが繰り返される街。