ガラス越しに、春樹は集中治療室で機械に繋がれ、眠っていた。


顔中包帯だらけで、これが本当にあの、憎たらしいことばかり言うあたしの弟なのだろうか。


見つめていたって何も変わらないのに、それでもやっぱり涙が溢れる。


どうしてこんなに近くなのに、触れることさえ許されないのだろう。



「…春樹っ…」


呟けば、タカによって支えられる。


彼もあたしの横で、悔しそうに顔を歪めていた。


生きていてと願う一方で、こんな姿を見せられては、もう楽にしてあげるべきなんじゃ、とも思ってしまう。


辛そうな春樹なんて見てられないよ。



「…あたしが代わりに死ねば良いんだっ…!」


そしたらこの子は助かるじゃない。


血が必要なら全部あげるし、臓器だって、何だって、必要ならあたしのもの全て移植すれば良い。


なのにタカは、リサ、とあたしを制してから、



「冗談でもそんなこと言ってんじゃねぇよ。」


冗談なんかじゃないのに。


それでも彼があまりにも悲しそうだったから、それ以上の言葉が出なくなる。


ガラス一枚を隔てた距離で、何も出来ないだけの自分。


泣きじゃくりながらその場にうずくまると、タカは立たせようと腕を持ち上げてくれる。


けれどそれを振り払い、春樹、春樹、と呼び続けた。


折角5年を経てようやく向き合えるようになったというのに、こんなのあんまりだ。


一体何をすれば、春樹を助けてあげられるだろう。