部屋を出て、ふらふらと歩いていると、自動販売機の横のベンチに、タカがいた。


彼は持っていた缶ジュースを差し出してくれるが、あたしは溢れた涙が止まらなくなってしまった。


助けてあげたいと思えば思うほど、何も出来ない自分の無力さに、ひどく惨めにさせられる。



「…春樹がっ、春樹がっ…」


嗚咽混じりに、けれど言葉になんてならなかった。


タカはあたしを隣に座らせ、手に握らせてくれた、ホットのミルクセーキ。


そのあたたかさにまた泣けた。



「春樹なら今、集中治療室で闘ってるだろ?」


でも、死ぬかもしれないんだって。


と、言おうとしたが、さすがにそれを口にすることは出来なかった。


頷くだけのあたしにタカは、



「ごめんな、リサ。」


どうして謝るのだろう。


悪いのは、あたし達じゃないというのに。



「道明くん、呼び出されて組に戻ったよ。」


「………」


「何か事後処理とか、これからのこととかで、バタバタしてるらしいから。」


堀内組の、道明さん。


今ほどそれを歯痒く思うことはない。


タカはこちらを一瞥し、まるであたしの思考を読んだように、



「なぁ、道明くんのこと、憎いと思う?」