あたしは春樹の血の繋がった姉だというのに、それだけじゃダメってことだ。


成人していないというだけで、あたしには何の権利もないってこと?



「ふざけないでよ、早く春樹のこと助けてよ!」


「ですから、何度も申し上げています通り…」


「アンタ医者でしょ!
こんなとこでベラベラ喋ってる暇があるなら、やれることあるはずじゃん!」


どうしてよ、どうしてよ、とあたしは繰り返す。


それはただ、どうにもならない苛立ちをぶつけてしまいたかっただけなのかもしれないけれど。


彼はまたため息を混じらせ、



「我々だって神ではないんです。」


じゃあもう、縋るものさえないじゃない。


未来を夢見て、やっと一歩を踏み出そうとしていた春樹が、何でこんなことにならなきゃいけないのか。


あたしが身代わりになってあげるはずだったのに、どうして。



「…お願いだから、春樹のこと死なせないでよっ…」


親に見捨てられたあたし達。


なのにあんな両親に頼らなければ、春樹を助けることさえ出来ないという現実。


書類ひとつに記入することが何だというのだろう。


紙切れ一枚で、春樹の生死が決まるかもしれないだなんて、おかしいよ。



「とにかく、我々も最大限の力は尽くしますから。」


そう言って、彼は部屋を後にした。


何の慰めにもならないような言葉を掛けられたって、喜べるはずもないというのに。