あたしは所詮、セックスでしか価値を見い出せない女だ。


けれどそれは愛の言葉よりずっと明確で、タカをより内側に感じられた気がした。


そしてどうしようもない関係は、こうやって始まったのかもしれないけれど。



「何かここ、寂しい部屋だね。」


あんま帰って来ねぇからな、と彼の台詞。


まるで月の輝きにさえ見放されたような一室で、タカから吐き出された煙が揺れた。


愛も恋もなくて良い。


信用してるわけでもないし、それ以前にあたしは、この人のことなんて何も知らない。


けど、でも、吐き出した分だけ楽になれた気がした。



「風呂使えば。」


タカは言った。



「どうせお前、帰らなくても平気だろ?」


「………」


「泊まってけよ。」


何が可笑しいのかもわからないのに、気付けば噴き出したように笑ってしまっていた。


彼はそんなあたしの様子に、不貞腐れた顔を向けてくる。



「ありがとね、タカ。」


きっとこの人は、あたしが家に帰りたくないということに気付いているのだと思う。


だから多分、優しい男なのだろう。


体を起こし、お風呂場へと向かった。