そうだね、タカ。


胸元で重なる、揃いのリング。


それはぴったりとくっついて、確かに寄り添い合っていた。


あたし達はもしかしたら、小さな不安を掻き消してしまいたかっただけなのかもしれないけれど。


それでも互いを求めながら、より深く交わっていたかった。



「年が明けたら、今まで出来なかったこといっぱいしような。」


密着した、少し汗ばんだ肌と肌。


そして溶け合う心がふたつ。



「お前がいてくれたから、俺大事なものに気付けたんだと思うから。」


「………」


「もう、普通のことを普通にしていたいんだ。
人が当たり前のように毎日を過ごすように、俺もこれからはお前とそうやって生きていけたら、って。」


耳にダイレクトに触れる言葉。


それを噛み締めながらあたしは、タカの腕の中でぬくもりを感じた。



「そんなこと言って、どうかしたの?」


「いや、何かわかんねぇけど言っときたくて。
まぁ、たまにはね。」


出会った頃からは想像もつかないと思うと、やっぱりちょっとだけ笑ってしまった。



「つーかほら、道明くんもいい加減ジジイだし、俺もそろそろ落ち着いてやらなきゃ、また口うるさく言われちまうだろ?」


「それヒドイって。」


まるで内緒話のように小声で言いながら、すっかりあたたまった体はふたり分の重みと共にベッドに沈む。


その日の夜は眠りに落ちる寸前まで、他愛もない話で笑い合った。


タカが今、ここに存在しているというだけで、愛しさだけが増していく。