例の拳銃の密輸の取り引きは、今日だったのか。


関係のないこととはいえ、想像すると、少しだけ怖くなる。



「きっと問題なく無事に終わるだろうけど。」


タカは肩をすくめて見せる。


もしも無事に終わったなら、堀内組はこの辺りどころか、日本中にその名を轟かせることにだってなるのかもしれない。


そうなった時、この街はどうなるのか。



「心配だな、道明くんのこと。」


「そうだね。」


けれどあたし達は、ここで憂慮することしか出来ない。


月の輝きが恐ろしく綺麗な分だけ、何も起こらないでと願ってしまう。


タカは宙を仰いだ。



「TT33――設計者の名前から取って、通称トカレフ。
特徴としては、安全装置がなくて、グリップの中央部分に円で囲まれた星のマークがあるんだ。」


「………」


「って、俺は実物なんて見たことねぇけど。」


聞きたくはないのに。


タカはこちらを一瞥し、あたしの顔色に気付いたのか、部屋入ろうぜ、と言った。


震えていたのは寒さだけの所為ではないけれど、でも頷いて室内へときびすを返した。


吐き出した吐息もまた、少しばかり震えていた。


タカはまるであたしの体をあたためるようにと抱き締めてくれる。



「もう寝よう、考えたって意味ねぇんだから。」


「…うん。」